家の部材となる、柱、梁、桁等はあらかじめ大工小屋で加工して接合部に仕口というものを作っておかなくてはなりません。
その加工をするためには棟梁が部材ごとに墨付けというものを行います。
墨付けとは言葉通り、部材に直接、原寸大で加工する箇所を墨で描き込んでいくのです。
そしてその墨付け通りに大工さんがノミなどの道具を使い加工していきます。
棟梁がその墨付けを正しく行なうために必要なのが「矩計り(かなばかり)」と「尺棒(しゃくぼう)」というもの。
矩計りは各階の床の高さや梁桁の位置、言わば家の断面の高さ寸法を記したもので、その建物固有のものになるので、一軒ごとに作らなくてはならないものです。
一方尺棒は建物の横方向の部材の長さの基準を決めるもの。
柱の位置はだいたい3尺おきと日本建築の基本は決まっているので使い回すことも可能になります。
今回は棟梁と一緒にこれから建てる家の矩計りと尺棒を作ってきました。
こちらは尺棒、一尺ごとに線が引かれ基準点からの距離が記されています。
床梁などのサブ的な構造材が置かれる基準となる三尺ごとに星印が三つ、柱が置かれる基準となる6尺のところには星5つが描かれていました。尺の字の書き方も独特です。
こちらが墨付けを行なう道具。
墨壺(すみつぼ)と墨指(すみさし)です。
墨壺は独特の形をしていますが、糸車がついており糸の先端についた針を木材に刺し、糸をピンとはってその糸を弾くと材に墨あとが付きまっすぐな線がひけるという優れもの。法隆寺建立の時代から変わらず使われ続けているという、完成された道具といえます。
墨指は竹でできた棟梁のお手製、先端が墨を含み易くするために細かく切れ目が入っています。
墨壺の中にちょんちょんと墨指をつけて墨を吸わせて使います。
そしてこちらは指矩(さしがね)、大工さん必携の道具のひとつ、これさえあれば屋根の勾配から部材の割り付け寸法の計算、墨付けまで何でもできるという、形状はシンプル極まりないですが、非常に奥が深い道具です。
表目と裏目というのがあり、裏の目盛りは表の寸法の√2倍の寸法で刻んであり、長さを計算しなくても計れるというものだそうです。(どのような使い方ができるのかはいずれ探っていきたいところです)
棟梁が言うにはこの指矩を使える大工さんも少なくなってきてしまったとか・・
ところでお気づきかとは思いますが、写真の差矩の一本は見慣れたセンチメートルの刻みですね。
大工さんの世界ではまだまだ尺寸が主流ですが、一般の人々の暮らしの中ではメートル法が主流、私達設計する側はというと、柱や梁等の構造材の割り付けは製材する人達や加工する大工さんの世界で一般的な尺寸での寸法を使い、使う人の寸法が基準になるところ(リビングやキッチン等、内装の寸法)ではメートル法での記載というダブルスタンダード・・。
お陰で大工さんも尺寸とメートル法2種類の指矩を使い分けての墨付けをされていました。
矩計りの写真を取り忘れたので、後日追加します・・